教養は人生を通しての武器となる!
『コレでちょっくら青空教室といこうぜ』
スラムのような街で教科書を売って日銭を稼いでいた主人公の少女ハルとおっさんの話。
主人公ハルは真っ当な教育を受けたことがない15歳の少女。
そこである日お金を払うから英語を教えさせろという元教師のおっさんと出会い、
おっさんとの交流を経て少しずつ人生に対して前向きになっていく。
といった感じの話です。
やっぱりね、読切ってこうでなくっちゃ。
1話限りの短いページ数で起承転結を抑え、
1人の人間の成長を描く。
今作はまさにそういった読切です。
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親もおらずお金もなく住む場所もままならず、教育の機会も与えてもらっていないという
まさに絵に描いた恵まれない子供、という主人公。
最初はトゲトゲしたような言葉遣いが多い主人公ハルですが、
おっさんからの"教育"を受けて少しずつ明るくなっていく様もとても良い。
そしてついにはハルは
『いつか教師になれたらって思ってる』とおっさんに伝えるわけです。
このセリフは『叶うことないってのを承知で言うんだけどさ』という諦めを含んだ前置きを経てのセリフです。

しかしその時のハルの目は非常にまっすぐなんですよね。
そして続けておっさんにこう聞くわけです。
『どうしたら教師になれる?』
もうね。
良い!!!!
ここに教育に携わることの醍醐味が本当に詰まっている!
(*私は教育者ではありません)
自分の夢が現実的ではないことは主人公はわかっているんです。
それでも、何も知らなかった主人公の中に教育を通して目標が芽生える。
そしてそれを叶えるための方法を知ろうとしている。
いやーーこんなん教え子に言われたら泣いちゃうよね!
でもね、もちろん現実は甘くないんです。
どうしたら教師になれるか?と問われたおっさんはそのために必要なプロセスを説明します。
高等学校を出ること、免許を取ること、試験に合格すること。
お金も知識も持たない少女にとって全く現実的でないものです。
『そっか』
『聞いただけだから』
『ありがとう』
自分の現状にとって非現実な現実を突きつけられ、諦めに傾く主人公。
しかしそこでおっさんは主人公に対してこう言うんです。

『人生変える覚悟はあるか?』
もう最っっっっっっ高ですね!!!
アツい!!
非現実的な目標。
諦めないといけない目標。
自分の中にこれらを持ってしまった子どもにとって、
この言葉はどれほど嬉しいでしょうか。
そしておっさんはこう続けます、
『この地域からでも通える学校が一つだけある』
『受験科目俺が死ぬ気で教えるから、何年かかっても良い。お前はまずその高校を目指せ。』
夢とか目標を叶えるっていつだって大変なんです。
一発逆転的な何かで変えられるほど人生って簡単じゃない。
いつだって必要なのは一個ずつ積み上げること、時間をかけること。
時には教えを乞い、修正し、また積み上げていくこと。
SNSばかり見ているとこういった地道な姿勢を軽視してしまうかもしれません。
しかし私はこういった道中苦労する覚悟を持って、少しずつ目標を見据えて進もうという考えが大好きです。
そしてね。
今作の主人公は15歳です。
既に大きな遅れをとっている状態です。
お金がないことや、勉強ができないことよりもここが一番でかいかもしれない。
そうなると"人生を変える覚悟"が必要になる。
それを携えて一個ずつ積み重ねていけば、遅いなんてことはない。
私はやはりこれを信じたい。
スタートが早い人が有利なのは明らか。
恵まれた環境で過ごせる人が有利なのも明らか。
それでもいつだって人生を変える瞬間になり得るし、遅いなんてことはない。
今作のおっさんのように、これを本気で信じて道を示せる大人になりたいものです。
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そして10年の月日が流れ、主人公は無事に教育系の大学に進みます。
そして最終学年。
自身と同じ生まれの恵まれない子供達に教科書を届けたいという思いから、
悩んだ末、夢であった教師ではなく教科書を作っている出版社に就職を決めます。
教師にならない選択をしたことをおっさんに謝る主人公。
申し訳なさそうに伝える主人公におっさんはこう言います。

『お前に教え込んだ武器はずっとお前の味方だよ』
そうなんですよ。
何をやろうと。
どんな道に進もうと。
地道に蓄えた教養は人生を支える武器になるんです。
子供の時はこれがわからない。
『数学なんて将来何の役に立つんですか?』
この手の質問は古今東西普遍的に存在します。
かくいう私も子供の時に先生に聞いたことがあります。
そして楽しく学べないものに出くわす度に同じ疑問を感じてきました。
しかし博士の学位を取り研究者として生きるまで学問と向き合ってきた今になって、
蓄えてきた知識とそれを得るまでの過程は自分の血肉になっていると心底感じます。
私の専門は理論物理学ですが、物事の成否を判断するには数学や理科の力が必要不可欠です。
こういった理科系科目は『正しいか正しくないかを判断するために論理を積み重ねる学問』です。
何が正しく何が正しくないかを主張するためには、それ相応の証拠とデータを携えて論理を組まなければいけません。
SNSが猛勢し、たくさんの情報が溢れる現代。
そこに高度な生成AIが登場し、個人が自力でやらないといけないことや必要な知識は激減しました。
これは私がいる研究業界においてもそうです。
もしかしたら作中で描かれている英語教育も必要ないと感じる人が今後もっと増えていくかもしれない。
しかしだからこそ、これまで以上に正否を見極める個人の力が必要になると思うし、
教養はその力の礎であると。
そう思わせてくれる話でした。
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私が学問に従事しているからか、この作品はとても刺さりました。
『勉強は贅沢品』なんて言葉もありますよね。
おっさんに出会う前の主人公ハルのように、学ぶことができるというのは当たり前じゃない。
子供のうちは学ぶことの重要さ、価値がわからないかもしれない。
それでも我々が学んできたことは長い人生を支える武器になる。
私が大事にしていることをなぞってくれるような作品だと勝手ながら感じました。
読後感も非常に良い作品でした、ぜひみなさんがどう感じたか教えてくれると嬉しいです。
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